Rhapsody in Love 〜約束の場所〜



 その時、みのりの目の中に入ってきたのは、鍛え上げられた遼太郎の美術品のような肉体だった。

 盛り上がった胸筋に、見事に割れている腹筋。美しく波打つ背筋。


 みのりは息を呑んで、血で汚れたガーゼを握りしめて、固まってしまった。そして、ごくりと唾を飲み込んだ。


「……か、狩野くん。体操着は?どこに置いてるの?持ってきてあげる。」


 裸の遼太郎は、心臓によくない。
 早く服を着せて、隠してしまわなければ。それに、この身体の側から離れなければ…。


 そう思って、みのりは口早に問いかけた。


「……3年のテントのどこかにあると思うけど…」


 遼太郎はみのりをパシリに使うのを躊躇しているようだった。


「わかった。取ってきてあげるから、待ってて……。」


と、みのりが走り出そうとしたとき、すぐそばにあったパイプ椅子に足を引っ掛けて、前につんのめった。


「――うわ!!」


 勢いよく遼太郎の方へ倒れてしまい、顔を遼太郎の硬い胸に激しく打ち付けた。
 遼太郎はとっさに、タオルを持ったままの手で、みのりの肩を抱きとめていた。



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