Rhapsody in Love 〜約束の場所〜


 みのりの目から星が散る。目を閉じて打ち付けた痛みに耐える間、みのりは動けなかった。


 図らずもみのりを抱きしめる体勢になってしまい、遼太郎は自分の裸の胸に、みのりの唇の柔らかさを意識した。その唇が動き、熱い息が漏れてくるのを感じ取って、呼吸が浅くなる。


 ようやく、状況を把握したみのりは慌てた。
 顔を上げると、鼻と鼻が触れ合うほど遼太郎の顔が近くあり、


「わわわっ……!」


と、声を上げるものの、どう体を動かせば起き上がれるのかさえも判らないほど、焦ってしまっていた。


 やっとのことで、遼太郎の胸に両手をつき、みのりは立ち上がることができた。
 その時、遼太郎のハッとするほどの胸筋に触れていることに気が付いて、パッと両手を挙げる。


「……ごめんなさい。狩野くん、怪我してるのに。また、痛い思いさせちゃって……。」


 みのりは恥ずかしさと痛みで、鼻と口を手で押えながら、真っ赤な顔で言葉を絞り出した。


「……。」


 遼太郎はみのりが気にしないように返事をしたかったが、言葉は喉に張り付いて出ず、ただ動揺するみのりの表情を見つめた。


「…じゃ、待ってて。体操着取ってくるから。」


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