Rhapsody in Love 〜約束の場所〜
その動揺を隠すように、みのりはそう言って、一歩踏み出した。
ところが、焦りで注意力が欠けていたのか、乱雑に置かれていたパイプ椅子に、再び足を引っ掛けてしまった。
今度は遼太郎の方ではなく、地面に向かってつんのめる。
「……!!」
すかさず遼太郎は立ち上がり、左足を踏み出し左手を差し出した。みのりの腰に腕を回して、みのりの体が地面とぶつかるのを阻止する。
みのりの体はふわっと一瞬浮き上がったかと思うと、元の立っている状態に戻されていた。
何が起こったのか判らなかったみのりだったが、目の前に遼太郎の逞しい肩があり、腕が腰に回されている。その状況を把握すると、顔をさらに赤くして体をのけぞらせた。
それに呼応するように、遼太郎も赤面して腕を引っ込めた。
「私、ホントにドンくさくって……、ホント、嫌になっちゃう……。」
そっとゆっくり、みのりは遼太郎から離れ、今度こそは気を付けてパイプ椅子の林を抜けた。
そして、はにかんだほのかな笑顔を見せると、救護テントを出ていった。
フォークダンスをしている横を通って、3年のテントの方へ走っていくみのりを、遼太郎は目で追った。