Rhapsody in Love 〜約束の場所〜
「あ、僕の体操着を取りに行ってくれてます。」
「そう。どれ、傷を見せてみて。…もう、血は止まってるみたいね。はい、これで大丈夫。でも、今日はもう激しい運動はダメよ。」
養護教諭は、ぴったりと傷口をくっつけるようにテープを貼り、遼太郎を救護テントから送り出した。
遼太郎が歩いて3年のテントへ向かっていると、「狩野」と刺繍された体操着を手に持って、戻って来ていたみのりと出会った。
体操着を受け取って、それを頭から被ると、みのりは心なしか安心したような顔をした。
「先生の服汚してしまって、すいません。」
遼太郎が謝ると、みのりは自分の服が汚れていることに初めて気が付いたらしく、肩や背中を見返してから首を振った。
「大丈夫よ。ちゃんと洗えば落ちるから。それに、私がコケそうになって、狩野くんが助けてくれた時に付いちゃったわけだし…」
みのりは恥ずかしそうに、肩をすくめた。そして、
「助けてくれて、ありがとう。」
と、はにかんで少女のような笑顔を遼太郎に向けた。
この笑顔に、遼太郎の中の何かが弾けた。弾けた後、じんわりと暖かく心がとろけてくる。
何も言葉は返せずに、かすかに頷くのがやっとだった。