Rhapsody in Love 〜約束の場所〜
フォークダンスが終わり、体育大会はあと閉会式を残すのみになった。
「さあ、体育大会が終わると、3年生はいよいよ入試に向けて、導火線に火が着くね。」
フォークダンスから閉会式の隊形に移る生徒たちを見ながら、みのりは深く息を吐いた。
遼太郎は無言でみのりを見つめる。
「狩野くんは花園予選もあるから、これからが正念場だね。」
みのりが遼太郎に向き直ると、二人の目が合った。
みのりは遼太郎の視線の中に、かつてはなかった〝自信〟を感じ取った。
「頑張ります。〝いい男〟になれるように。」
以前、みのりが言ったことを遼太郎は覚えていた。そのことを、みのりは素直に嬉しく思い、
「うん、頑張れ!」
と言って、にっこり笑いかけた。
「さあ、閉会式よ。行っといで!」
そして、そう言いながら、遼太郎の背中を押した。
みのりに押し出されると、百人力になって何でもできそうな気がしてくる。
遼太郎は振り返りながら微笑むと、軽快に走って生徒の一群へ融けていった。
みのりは、そんな遼太郎を目で追いながらつぶやいた。
「もう既に、今でもいい男だと思うんだけど……。」
――でも、狩野くんが大人になったら、もっといい男になれるね……。
そう思いながら、みのりは閉会式に出るために、職員用のテントに戻った。