Rhapsody in Love 〜約束の場所〜

9 遼太郎の初恋




 体育大会の次の日、その出来事は、前触れもなく突然起こった。
 少なくとも、遼太郎の中では。


 みのりとの個別指導がなくても、遼太郎は朝早く登校する癖がついてしまっていた。

 早く登校して朝礼が始まるまでの時間、前日にし残した宿題や英語や国語の予習をしたり、日本史のノートづくりをしたりしている。
 放課後は部活をして、帰宅するのは8時過ぎになる遼太郎にとって、夜は疲れてしまって寝てしまうことが多かったので、朝のこの時間はとても貴重だった。


 いつものように、人気のない生徒の昇降口で靴を下駄箱に納めていた時、遼太郎の後ろに女の子が立った。

 背後霊のようにいきなり立っているものだから、遼太郎はビクッと単純に驚いて何事かと無言で凝視すると、女の子は水色の封筒を遼太郎に差し出した。


「これ、読んでください。」


 消え入るような声が発せられて、反射的に遼太郎は封筒を受け取ってしまった。

 女の子はぺこりと頭を下げると、走り去った。
 遼太郎はその女の子の後ろ姿と、渡された封筒を交互に見遣って、気が付いた。


ーーラブレターをもらってしまった…!!


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