Rhapsody in Love 〜約束の場所〜



 遼太郎は手紙を読んで、複雑な気持ちになった。


――仲松先生が言ってた、あの子だな……。


と、遼太郎は思い返した。

 昨日、救護テントを覗き込んでいた女の子だ。怪我をした遼太郎を心配して、様子を見に来たのだろうか。


 人から好かれることは、決して嫌なことではない。手紙にあるように、迷惑だと感じる気持ちもない。

 ただ、顔もよく覚えていない相手から、いきなり恋愛感情を示されても……、どうしていいか分からず、困惑するだけだ。


『今好きな人や付き合っている人がいなければ、とりあえず付き合ってほしい』


 手紙の中ではそう言っているが、付き合うってそういうことなのだろうか?
 これで、気軽に付き合ってしまう人間もいるとは思う。そして、付き合っていく中で、相手のことを好きになることもあるだろう。

 しかし、もともと遼太郎は〝彼女がほしい〟と望んでいたわけではないので、今現在好きでもない相手と、あまり気軽に付き合う気もなれなかった。


 ただ、相手の女の子の立場になってみたら……。
 この手紙を渡すのに、どれほどの勇気を振り絞ったのだろう。そして、文面ににじむ自分への想いを真摯に感じ取って、遼太郎はため息をついた。



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