Rhapsody in Love 〜約束の場所〜
『近いうちに会える機会を作る』と言っていた約束に違わず、石原は会う時間を作ってくれた。
でも、何事もなかったかのようにみのりを誘う石原に、却ってみのりは違和感を持ち、自分への罪悪感を強めた。
石原には罪悪感はないのだろうか。石原は自分の中に存在している罪悪感を、ずっと無視し続けているのだろうか。
…いや、みのりの知っている石原は、そんな無神経な人間ではないと思う。
みのりの知っている石原は、もっと細やかで、純粋で……。純粋にみのりを想い、純粋に会いたいと思うから会いに来る。
それは、みのりを見つめる石原の深い眼差しが、顕著に物語っている。初めから、みのりに対する恋情と家族に対する罪悪感は、彼の中では同居しないのかもしれない。
でも、たとえ想いは深く純粋でも、人の道に外れたことを石原にはさせられない。
罪深い嘘を、これ以上吐かせてはいけない……。
何よりも、あの時罪悪感を自覚しまったみのりは、以前と同じ気持ちで石原に会うことは、もう出来なかった。
みのりはメールの返事はせずに、携帯電話を閉じた。いつしか両目に溜まっていた涙が、零れ落ちる。