Rhapsody in Love 〜約束の場所〜
――このまま、もう私からはメールはしない…
以前、別れをほのめかした時の石原の強い抵抗を思い出して、非情だとは思ったが、こうするしかないとみのりは思った。
「もう会わない」と言おうものなら、石原は車を飛ばしてやって来て、懸命にみのりを説得するだろう。
そして、説得されれば気持ちが折れ、石原を愛しいと思う気持ちの方が勝り、結局抱き合ってしまう。
〝終わり〟にするには、無視して石原の心を挫く必要があった。
数時間経って夕暮れ時に、再び石原からのメールが入る。
みのりは自分が石原を傷つけようとしていることが怖くなって、携帯電話さえも開けなかった。携帯電話を見つめ、ブルブルと体が震える。
――独りでいたら、頭がおかしくなりそう……!
そう思ったみのりは、震える手で携帯電話を取り、……石原にではなく、澄子へと電話をした。
電話に出た澄子に、やっとのことで言葉を絞り出す。
「澄ちゃん。今日、うちに泊まって……。」
尋常ではないみのりの様子を心配した澄子は、すぐにみのりのアパートへ駆けつけた。
憔悴しきったみのりから状況を聞くと、澄子はそっとみのりを抱きしめた。