Rhapsody in Love 〜約束の場所〜
「今時、あんな古い歌の真似する人なんて……。」
口にはしなくても、石原の気持ちはあの歌と同じなのだろうか。
でも、言葉として、みのりを見つめて語られてるわけではないから、確信は持てない。
「『アイシテル』じゃなくて、『も・う・こ・な・い』……かもしれないし……。」
と、みのりはつぶやいた。
そう思ってしまうほど、石原との恋は、いつ途切れてしまうか分からなかった。石原が気が向いた時にだけ会える、この関係は、いつもみのりを不安にさせた。
それでも、さっきの二度目の愛撫を思い出して、みのりは疑念を振り払った。一人残された境遇では、望みのある方を選ばなければ辛すぎる。
石原の車のテールランプが消えた夜の暗さを見つめていると、いつしか、ずっと堪えていた涙がみのりの頬を濡らしていた。
みのりも石原も、このような状態がいつまでも続くとは思っていなかった。だけど、相手に突き放されたなら離れられるのに、お互いがお互いを求めて止まなかった。
そして、石原のこんなささやかな意思表示を心の支えにして、みのりはまた石原と過ごせるほんの一時を、ただただ待ち続けた。