Rhapsody in Love 〜約束の場所〜



 考査が実施されている間、行われている科目の出題者は、問題に関する質問を受けに教室を巡回する。
 問題を解いている生徒の反応を見るのは楽しみでもあるが、問題や解答用紙のミスを指摘されることもあるので、これが結構緊張する。

 50分間の考査が始まって30分くらい経ったころ、シーンと静まり返った廊下を歩き、みのりは3年1組の教室へと向かった。


「失礼します…。」


 教室へ入ると、一斉に視線がみのりへと集まる。
 試験監督はラグビー部顧問の江口だった。


――江口先生は3年部だったっけ?


と思いつつ、みのりは会釈をする。
 江口は教壇の上から窓辺へと移動し、教壇の場所をみのりに譲った。


「日本史の人。何か質問はありますか?」


 日本史選択者の何人かと、みのりの目が合った。しかし、手を挙げて質問する生徒はいない。みのりは机の間を歩いて、生徒たちの出来具合を確認し、様子を少し観察した。
 

 質問も出ないようなので、


「それでは、最後まで頑張ってください。」


と言い残して、教室を出ようとした時――、


「先生。」


と、遼太郎が手を挙げた。


< 225 / 743 >

この作品をシェア

pagetop