Rhapsody in Love 〜約束の場所〜
考査が実施されている間、行われている科目の出題者は、問題に関する質問を受けに教室を巡回する。
問題を解いている生徒の反応を見るのは楽しみでもあるが、問題や解答用紙のミスを指摘されることもあるので、これが結構緊張する。
50分間の考査が始まって30分くらい経ったころ、シーンと静まり返った廊下を歩き、みのりは3年1組の教室へと向かった。
「失礼します…。」
教室へ入ると、一斉に視線がみのりへと集まる。
試験監督はラグビー部顧問の江口だった。
――江口先生は3年部だったっけ?
と思いつつ、みのりは会釈をする。
江口は教壇の上から窓辺へと移動し、教壇の場所をみのりに譲った。
「日本史の人。何か質問はありますか?」
日本史選択者の何人かと、みのりの目が合った。しかし、手を挙げて質問する生徒はいない。みのりは机の間を歩いて、生徒たちの出来具合を確認し、様子を少し観察した。
質問も出ないようなので、
「それでは、最後まで頑張ってください。」
と言い残して、教室を出ようとした時――、
「先生。」
と、遼太郎が手を挙げた。