Rhapsody in Love 〜約束の場所〜
「先生」とだけ呼んだものだから、みのりと江口の両方が、遼太郎を見る。遼太郎はもう一度、
「仲松先生。」
と、呼びなおした。
みのりは頷くと、速やかに廊下側の列へと移動して、遼太郎の側に来る。
その刹那に、フワッと遼太郎の鼻孔に、花のような澄んだ空気のような、みのりの薫りが満ちた。
「ん、何?」
みのりが遼太郎の椅子の背もたれに手をかけ、上半身を倒し、顔を近づけて囁いた。
みのりとこんなに近くなるのは久しぶりのことなので、無条件に緊張する。
「…あ、あの。内閣の名前を答えるときは、第1次とか第2次とかは必要ですか?」
もちろん必要だと遼太郎自身思っていたし、どうでもいいような質問だとは思ったが、考査中はこうでもしないと、みのりと接触を持てない。
「うん、皆にも説明するから聞いてて。」
みのりはそう言って、遼太郎の肩に手を置いて、ぐっと力を込めた。
――頑張って!
と、言葉にして伝えられない思いを込めたつもりだった。
遼太郎の息が一瞬止まり、心には浮遊感を覚える。