Rhapsody in Love 〜約束の場所〜



 古庄が尋ねると、みのりは痛かった鼻を押さえて、


「だ、大丈夫。…失礼しました。」


と、くぐもった声で言い、古庄と入れ替わりで教室を出て行った。


 気を取り直して、地理選択者からの質問を受けている古庄を、遼太郎は眉間に皺を寄せて、鋭く見つめた。


――もっと気をつけて入って来いよ!


 古庄がみのりに痛い思いをさせたことに憤慨するよりも、みのりの腕に直接触れてしまったことが許せなかった。



 考査が終わると一気にドカッと答案が返ってくるので、教師たちはせっせと採点作業に追われることになる。

 みのりは一つの考査でいつも100問出題することにしており、一人に付き100回○か×かをチェックをしなくてはならない。
 右手に赤ペン、左手には指サックで、一心不乱に採点しても、一クラス1時間以上はかかってしまうので、骨の折れる作業だ。これを、1年生5クラス分、3年1組の25人分、全部で225人分することになる。


 これから、ほぼ一週間の間に採点し、前期の評点をだし、単位認定のための成績判定会議が行われる。さらに3年生は入試の調査書のための5段階評価も出さなければならない。

 矢継ぎ早にすることが終わったら、体育の日を絡めた形ばかりの秋季休暇が待っている。



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