Rhapsody in Love 〜約束の場所〜
「えっ、じゃあ。28歳?」
「29歳?」
と、矢継ぎ早に問われる。
みのりはちょっと躊躇しているような素振りを見せたが、
「うん、29歳。今はね。」
と、答えた。
「『今は』って、どういうこと?」
「どういうことって、もうすぐ来月には30歳になっちゃうってこと。」
みのりのこの告白に、生徒たちは何と反応していいか判らず、シーン…と〝同情〟の沈黙が漂うよう。
「でも、先生。彼氏は?彼氏がいれば、別に30になったって、大丈夫でしょ?」
新たな質問をしてきたのは、やっぱり宇佐美だ。先ほど以上に、ジリジリと生徒たちの関心の視線を感じる。
「……か、彼氏?」
「ていうか、結婚は?してるの?先生?」
みのりの戸惑いとは裏腹に、質問はますます掘り下げられていく。
「ううん、結婚はしてない。いいご縁がなくてー……。」
こう答えて、彼氏のことは忘れてくれたかと思ったが、
「じゃあ、彼氏は?」
と、やっぱり問い直された。
石原は、彼氏と呼べるのだろうか…?みのりはとっさに石原を思い浮かべたが、その胸がチクリと痛んだ。
この子たちにとって、〝彼氏〟とは、未来の希望を共有できる存在だ。そういう意味では、石原は彼氏ではないだろう。