Rhapsody in Love 〜約束の場所〜



 筝曲部員たちは井上先生の合図で、あらかじめ配置されている琴の横に座り、指に爪をはめ、出番の時を待っている。みのりがステージの最終確認をし、部員たちに目配せしてステージ脇に下がると、間もなくして放送部員のアナウンスがあり、幕が上がった。


 筝曲部の部員たちは、放送部の顧問が他校から借りてきて増強されたスポットライトに煌々と照らされる。
 光のまばゆさにみのりは目を細め、昂揚感に胸が高まった。難なく演奏を終えてくれることを祈りながら、息を殺してステージ脇から見守った。


 式典の在校生の席は、ステージに向かって前から3年生、2年生、1年生の順になっている。
 全校朝礼でもすし詰め状態なのに、今日は一般客や来賓もいるので、息がつまりそうだ。
 十月の中旬ともなれば暑さは和らいではいるが、まだ気温は高く、十月ということで服装を冬服に統一されていることもあって、じんわりと汗をかいてくる。


 アナウンスがあり、皆のざわめきが収まって、箏曲部の演奏が始まった。

 遼太郎は、別にみのりが弾いているわけではないと分かってはいたが、顧問のみのりはどこかでこの演奏を耳を澄ませて聴いていると思い、自分も真剣に聞き入った。


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