Rhapsody in Love 〜約束の場所〜
箏曲部の演奏は、何ヵ月もかけて綿密に練習が行われてきただけあって、心に響く完璧に近いものだった。
二曲めになるとき、一部の琴がステージ脇に置かれていた琴と交換された。これは、曲が替わって調律しなおす必要がある場合、あらかじめその曲に応じて調律している琴を用意しておいて、それと交換されるためだ。
二曲め用の琴を抱えて出て、一曲め用の琴を抱えてステージ脇に引っ込んでいった白いスーツの女性に、遼太郎の目は釘付けになった。
――先生だ……!
見たことのない白いスーツに、髪は高い位置にまとめ上げられていて、日頃のみのりの感じは全く見受けられなかったが、遼太郎は確信していた。
もっとちゃんと確かめたかったが、二曲めの演奏が始まってしまい、みのりの姿は探せなかった。
二曲めの演奏が終わると、箏曲部員たちは自分の弾いていた琴を抱えてステージ脇に退散し、素早く片付けが行われる。みのりも部員とともに、立奏台や譜面台を素早く回収して歩いた。
そのみのりを、遼太郎の目は追いかけた。胸の鼓動がどんどん早くなり、呼吸も無意識に大きくなる。