Rhapsody in Love 〜約束の場所〜
「さあ、雑談はおしまい。目が覚めたところで、今日出すはずだった宿題プリントを今から配るから、残りの時間はそれを各自やりましょう。」
プリントを配ると、家で宿題をやるより今済ましておきたいのだろう、生徒たちは、黙ってプリントの問題に取りかかった。
みのりは心地好い風が入ってくる窓辺にもたれて、外を眺めた。
――来月には三十歳かぁ……。
腕を組み、ため息をもらす。
最近では、三十歳で独身という女性もそう珍しくない。特に、みのりの周りには、そんなハイミスがたくさんいた。
――実家に帰ったら、うるさいだろうなぁ……。
もちろん、結婚のことでだ。特に母親は、「相手はいないのか?一生独身のつもりか?結婚するなら、婚活しなきゃ」…などなど、嫌になるほど口うるさい。
婚活……すなわちお見合いや出会いのためのパーティーに出たりするならば、さすがに石原と今の状態を続けながら……という訳にはいかないだろう。
三十歳になるのを機に、石原との関係を清算すべきなのかもしれない。
でも、数カ月に一度くらいしか会えない石原なのに、「離れてしまう」……そう思っただけで、みのりの身体は震えた。