Rhapsody in Love 〜約束の場所〜



「先生、でも、ちょっともったいないね。この前の式典の時の先生、髪の毛アップにしててすごくきれいだったから。」


 平野がそういうと、「あー…」と、みんな一様に同意のため息を漏らした。


「まあ、そうかもしれないけど。毎日あんなヘアースタイルできないもの。あの髪と化粧するのに、朝5時起きして準備したんだから。」

「えー、5時起き!」

「気合入ってる!」


と、いろいろと声が上がった。


 ざわめきが一通り収まったとき、遼太郎は不意に、あの日のみのりとの会話を思い出す。そして、無意識にプッと吹き出してしまった瞬間、教室中の視線が遼太郎に集まった。


「狩野くん、どうしたの?」

「遼太郎、何だよ。何がおかしかったんだ?」


 口々に周りの生徒たちが、遼太郎に問いただす。遼太郎は手を振って、何でもないことを示していたが、合点のいかない二俣が、業を煮やした。


「遼ちゃん、何だよ。教えてくれよ!」


 親友である二俣にそう言われて、遼太郎はみのりを見た。


「先生、言ってもいいですか?」


 遼太郎が何のことを言っているのか分からないみのりは、首をかしげて、


「何?私も知りたいわ。」


と、頷いた。
 遼太郎は改まって、居住まいを整えて口を開く。


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