Rhapsody in Love 〜約束の場所〜
「いえ、あんまりにぎやかだったから、先生がいないのかと思って。」
「ごめんなさい。授業の邪魔をしました。さあ、みなさん静かにしましょう。」
「いえ、楽しそうでいいですね。」
古庄は爽やかすぎる完璧な笑顔を残して、ドアを閉めた。
みのりは古庄をいなくなったのを確認して、教卓に片肘をついたまま片手を振って、
「ごめんね、ルパーン。」
と、妖艶そうな作り笑いをして言ったので、再び教室中は大爆笑の渦となった。
廊下にいた古庄が、びっくりして教室を振りかえる。
遼太郎は、みのりのユーモアを面白いと思い、そんなみのりの楽しさも好きなところだったが、みのりに馴れ馴れしい(…と遼太郎が勝手に思っている)古庄の存在自体が少し引っかかっていて、みんなのように無邪気に笑えなかった。
遼太郎の心の中とは裏腹に、みのりはこうやって3年1組で授業をするときが、一番心が休まる時となっていた。
日々の仕事に忙殺されているときでも、ちょっと落ち込むようなことがあったときでも、このクラスの無邪気で屈託がなく、それでいて1年生のように幼くない生徒たちには心から打ち解けられ、心が重くなることも忘れられた。