Rhapsody in Love 〜約束の場所〜
だから、みのりからの連絡が来ない石原の不安な気持ちは、痛いほどよく解る。きっと辛い思いをしているのだと思う――。
それを思いやると、みのりの胸は申し訳なさと切なさで、キリキリと痛んだ。目を閉じて唇を噛み、携帯電話を畳んだ。
無情だと思われようが、返事を送るつもりはなかった。
石原も、もう気がつくべきだ。
みのりとは未来が望めないことに。自分が本来心を傾けるべきなのは、みのりではないことに。
みのり自身は、哀しく沈み込んでしまう感覚はあるが、もう身を切られるほどの苦しみはなかった。
いつかは石原を失うことは初めから分かっていたし、澄子が傍にいてくれたお陰で、一番辛く苦しい波は乗り越えられた。
……そして、遼太郎に話を聞いてもらって、あの抜けるような青空を見上げた時に、ふっ切れたように思う。
あの時、遼太郎はみのりに、『また人を心の底から好きになれますか?』と訊いた。
みのりは、もう誰も好きになりたくない…とは思わなかった。
石原ではない、誰でもない誰かを思い描いて、もっと深く心の底から好きになりたいと思った。
遼太郎があの問いを投げかけてくれたお陰で、自分の気持ちが整理でき確認できた。