Rhapsody in Love 〜約束の場所〜
目頭が熱くなり、眺めていた木々の梢の緑がかすんでくる。みのりは組んでいる腕に力をこめ、唇をかんで、乱れた感情を必死で落ち着けた。
ふと生徒たちの方へ目をやると、プリントの課題をしている生徒たちは皆、頭を下げているのに、遼太郎一人だけが頭を上げていて、パチリと目が合った。
みのりの様子がいつもと少し違うことに、気が付いたのだろうか。遼太郎が目を逸らさないので、みのりは笑顔を作って声をかけた。
「何?狩野くん。質問?」
遼太郎ははっと我に返り、首を横に振って再びプリントに取り掛かった。
みのりは気を取り直し深いため息をつくと、教卓へ戻り、生徒たちを見渡す。その生徒たちの中で、一際深く頭を下げている子がいる。二俣だ。
みのりは教壇を降り、つかつかと大股で歩いて、二俣の背後へと向かった。二俣の背中に膝を当て、両肩を掴んで引っ張り上げる。
「寝るなって、言ったでしょ!!」
「うおぉぉっ…!?」
二俣が驚いて、怪物のような声をあげると、教室中から笑い声がおこる。
「何だよ、先生~。課題は帰ってやるから、寝てたっていいじゃんかよ~。」
無理やり起こされた二俣は、不機嫌そうに口を尖らせた。