Rhapsody in Love 〜約束の場所〜




「バッサリ?」


と念を押されると、みのりは少々気おくれして、


「い、いや。ベリーショートというわけじゃなくて、長めのショートくらいに…。」


と、あいまいで訳の分からないようなことを言った。


「分かりました。お任せして頂けます?」


 美容師さんはにっこり笑うと、少し考えてから髪を切り始めた。そして、出来上がったのが、生徒にも大反響の髪形だった。


 これには美容師さん自身も大変満足したらしく、一歩下がって何度もみのりを眺めまわしていた。


「お疲れ様でした。」


と、ケープを取ってくれているとき、みのりの耳元で囁いた。


「僕、この後休みを取ってるんですけど、一緒に昼食でもしませんか?」


 みのりは驚いて、鏡越しに美容師さんを見た。

 ケープを持つ手に指輪が光る。


――ん?左手の薬指?


 みのりはとっさに眉間に寄った皺を隠して笑顔を作った。


「すみません。午後からは用事があって…。」


 みのりがやんわりと断ると、美容師さんもひきつった笑顔を作って頷いた。


――結婚してるくせに、ナンパなんかしてるんじゃないわよ!



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