Rhapsody in Love 〜約束の場所〜



 みのりが首をかしげて、遼太郎を覗き込んで微笑した。遼太郎の胸が、キューンと絞られる。

 手を伸ばせばすぐに届くみのりの肩を抱き寄せて、懐に抱きしめたい衝動が喉元までこみ上げてきた。


――ダメだ!場所と立場を考えろ…!!


 遼太郎は拳が白くなるほど強く握り、強い衝動を無理やり抑え込んだ。


 その時、二人の背後を、一人の女子生徒が通り過ぎようとした。
 足音を聞いてみのりが振り返ると、その女の子と目が合った。女の子は小泉智香だった。


「おはようございます。」


 みのりは遼太郎に向けたのと同じ微笑を、彼女にも向けあいさつをした。


「…お、おはようございます…。」


 消え入りそうな声であいさつしながら、智香は遼太郎にも視線を向け、軽く頭を下げて早足で通って行った。

 遼太郎は、みのりへの衝動に加え智香の登場の衝撃に、感情のコントロールが滅茶苦茶になりそうだった。


――あの子から告白されたことは、先生には絶対に気づかれたくない……!




< 276 / 743 >

この作品をシェア

pagetop