Rhapsody in Love 〜約束の場所〜
「だからって、今寝ていい理由にはならないでしょ!課題プリントをしないんなら、他の勉強をしなさい!そりゃあ、部活で疲れてるのは解るけど、自分が受験生ということも忘れちゃダメよ!!」
みのりは腰に手を当てて、くどくどと説教した。
「へーい……。」
二俣は顎を突き出して返事をし、課題に取り掛かるに見えたが……、
「そうだ、先生。今度の県大会の応援に来てよ。」
と言い出した。
「試合?ラグビーの?」
みのりも思わず、説教していたのも忘れて、返答してしまう。
「俺が、サッカーの試合に出るとでも?」
二俣は、生意気にも皮肉を返す。みのりは二俣に言い返そうと思ったが、このまま二俣のペースに乗って雑談をすると、他の子の集中を乱してしまう。
「ああ、もう。分かった、行くから。今は課題をやって。」
みのりは後ろ手に手を振って、それで会話を終わらせた。
ラグビーの試合、特にこの芳野高校のラグビー部の試合の観戦は、みのりにとってなじみのあるものだった。
三年前に芳野高校に勤務していたとき、高校時代にラグビーの経験のある石原は、ラグビー部の顧問をしていた。
芳野高校のラグビー部の試合の応援に行けば、石原に会える――。
みのりは芳野高校を離任した後も、石原に会いたいがために、ラグビー部の試合会場へ足繁く通っていた。