Rhapsody in Love 〜約束の場所〜
「……いいの、いいの。言わなくても。高校生だもの、好きな子くらいいるわよね。誰のことか…なんて、野暮なことは訊かないから。」
みのりは遼太郎の様子を察して、気を遣って柔らかい笑顔を作った。
――好きな人は、先生です!
遼太郎は切なく痛む心の中で、何度もそう叫んでいた。
さっき聞いたみのりの好意的な言葉に後押しされて、いっそのこと告白してしまおうか…とも考えた。
――……ダメだ。まだ、今は…!
みのりが不倫相手と別れてから、まだ1ヶ月しか経っていない。自分もまだ、〝いい男〟にはほど遠い。
でも、このまま黙っていれば、みのりは誤解したまま遼太郎に接するだろう。
「…あの、断る時に、いちばん傷つけない理由を考えて、そう言っただけで。本当に好きな人がいるわけじゃないんです。」
みのりに嘘をつくのは気が進まなかったが、そう言って誤解を解くしかなかった。
すると、みのりはホッと気を抜いた顔つきになる。
「なぁんだー。そっかー。ま、でも、それが賢明かも。好きな子や彼女は大学に行ってから作った方がいいかもね。」
みのりの気分を受けて、遼太郎も内心緊張を融き、表情を緩める。