Rhapsody in Love 〜約束の場所〜



「そりゃ、真奈美ちゃんと二人とも東京に行かせてたら、お金はかかるだろうねぇ。でも、反対しないんだったら、お父さんもお母さんも狩野くんのために頑張ってくれると思うよ。」


 遼太郎は神妙な顔つきで、黙って頷く。


「狩野くん見てると、大事に育てられてきたのが分かるよ。お母さんが毎日大きなお弁当作ってくれるのだって、部活で汚れたジャージを毎日洗ってくれてるのだって、狩野くんが望んだことに向かってそれを頑張れるように、期待してくれてるからなんだよ。期待してるから、親は子どものために頑張れるんだと思うよ。」


 遼太郎の目に、毎日母親が作ってくれる遼太郎の旺盛な食欲を満たす大きな弁当と、泥まみれになってもきちんと洗われて揃えられた部活のジャージが浮かんだ。
 それを実際に見てもないのに、どうしてみのりにそれが分かるのだろうと、思った。


「たまには感謝しなくちゃね。特にお母さんに。」


 みのりは目をくるっと回して、したり顔をした。



 渡り廊下の人通りが多くなってきたので、みのりは左のカーディガンの袖口をめくって、腕時計を確認した。



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