Rhapsody in Love 〜約束の場所〜



 邪魔しては悪いとは思ったが、遼太郎も部活を抜けてきているので、ずっと待ってはいられない。

 みのりの背後から、黙って軽く肩をたたいた。ビクッと驚いたのが、遼太郎の手に伝わってくる。


「ああ!狩野くん。」


 みのりが振り向くと、個別指導を受けていた男子も振り向いた。


「すみません、先生。大会のトーナメント表、持って来たんですけど。」


 遼太郎は男子の方には見向きもせず、みのりだけを捉えて言った。


「ああ、そう。ありがとう。」


 みのりはそう言い、再び男子生徒の方へ向き直って、


「…工藤くん。ちょっと先の問題やっててくれる?すぐ戻ってくるから。」


と、声をかけて立ち上がった。そして、遼太郎に改めて向き直る。


「それで、トーナメント表は?」


 遼太郎は、自分の手元にそれがないことに気が付いた。


「ああ!ふっくんが持ってます。先生の机のところで待ってます。」



 二人は足早に、みのりの席まで戻ってきた。
 すると、二俣がみのりの席に座り、カフェラテを手にしている。


「あっ!二俣くん!何してるの?」


 みのりが声をかけると、二俣はにんまりと笑い、


「先生、ご馳走様でした!」


カフェラテを掲げてそう言った。



< 287 / 743 >

この作品をシェア

pagetop