Rhapsody in Love 〜約束の場所〜
にこやかにみのりは遼太郎を見て言ったが、遼太郎は表情を硬くして、かすかに頷いただけだった。
その様子がちょっと引っかかって、みのりは遼太郎の様子を窺うように、ジッと目を止める。
「おう!頑張るぜ!!さっ、遼ちゃん。練習に戻ろうぜ!」
二俣がそう言ったのに応えもせず、遼太郎はみのりに会釈して、さっさと二俣よりも先に職員室を出ていった。
みのりは、いつもの様子とは違う遼太郎に軽い違和感を持ったが、首をひねるだけで別段気にも留めず、すぐに工藤のもとに戻っていった。
「ちょっと、遼ちゃん!どうしたんだよ。俺、何か気に障ることしたか?」
いつもは腹を立てることなどほとんどない遼太郎なのに、今日の遼太郎の態度はあからさまに怒っているものだ。
裏表のない性格の二俣は、黙って様子を窺うことなどせず、練習場の第2グラウンドへ行く途中、遼太郎の怒りの原因をダイレクトに本人に訊いた。
「沙希ちゃんに、言うぞ!」
遼太郎は口をとがらせて、短く鋭い言葉を吐いた。
「え……沙希に?何を?」
ますます訳の分からない二俣は、遼太郎を覗き込んだ。
遼太郎は怒りの気炎を吐く。
「仲松先生と、……間接キスしたって……!」