Rhapsody in Love 〜約束の場所〜


 みのりがどんなふうに遼太郎のことを考えていようと、遼太郎がみのりを想っていることには変わりなかった。


――でも……、やっぱり俺は、生徒の中の一人じゃなく、先生にとってたった一人の男になりたい……。


 そうならないと、卒業してからもずっとみのりとは一緒にはいられない……。


 遠くの山の向こうに日が落ち、早く暮れていく秋の燃えるような夕焼けを、遼太郎はバスの車窓から眺めていた。

 そして不意に、春の夕陽に照らされた渡り廊下で、一人佇むみのりの姿を思い出した。
 あの時、負っていた傷の痛みも忘れて、遼太郎の心は震えた。

 ……思えば、あの時からこの想いは始まっていたに違いなかった。



 週明けの月曜日、試合での遼太郎を見てから、なぜか心がざわめいてしまうみのりは、個別指導をするのが少し怖い気もしていた。
 緊張して落ち着かなく、いつもよりも早く出勤してしまい、渡り廊下で遼太郎が来るのを待っていた。


 秋の朝の冷えた空気の中、誰もいない渡り廊下に一人座っているみのり。
 いつもは自分の方が先に来て待っている遼太郎は、みのりの姿を見つけると少し驚いて、立ち止まってしまった。

 この週末、不安でいっぱいだった遼太郎にとって、みのりが先に待っていてくれたことは殊の外嬉しく感じられた。立ち止まったままみのりを見つめ、その感覚を噛みしめた。


< 322 / 743 >

この作品をシェア

pagetop