Rhapsody in Love 〜約束の場所〜
不意に試合中の遼太郎の表情が脳裏に浮かび、背筋に電流が流されたように震えが走った。
でも、目の前にいる遼太郎の褒められて少しはにかむ様子は、いつもと変わらない……。
みのりは平常心を取り戻し、気を取り直す。
「……ところで、狩野くん?『ダンボー』って何?」
「……は?」
突然、みのりが話題を変えたので、遼太郎は戸惑って目を丸くしてみのりを見た。
「試合中に、狩野くん言わなかった?『ダンボー』って。」
「聞こえたんですか?」
「もちろん、狩野くんの声とも思えないような声だったけど。狩野くん、あんな大きな声を出すこともあるのね。びっくりしちゃった。」
「……そりゃ、試合中ですから……。」
遼太郎はほのかに顔を赤くし、首の後ろを掻いた。
「ダンボーというのは、down the ballのことで、ボールをその場に置くことです。」
「ああ!そういうこと。それじゃ、わざとラックにするために、そう言ったの?『ラックにしろ』とも叫んでたよね?」
「ああ、それはですね…。」
みのりが試合の細かいところまでよく覚えてくれていることを、遼太郎は嬉しく思った。