Rhapsody in Love 〜約束の場所〜
14 一瞬の抱擁
十一月に入り、3年1組の教科書を使った授業は終了した。これから中旬に行われる全県模試までは演習をすることにしているが、その後の二月の仮卒まではどんな授業をしようかと、みのりはいろいろと思案していた。
もちろん25人の内、本試験で日本史が必要になる生徒もいるけれども、多分それは一人か二人で、後の残りは指定校推薦や一般推薦で進路を決めてしまい、試験で点を取るための勉強は必要なくなる。
今のところ、一人本試験を受ける生徒が判っていて、すでに個別指導を始めていた。
3年1組の授業が終わり、ホッと一息ついて職員室へ戻ろうとしていたみのりに、二俣が近づいてきた。
「みのりちゃん、一昨日は応援来てくれてた?分かんなかったんだけど。」
いつものように、教壇の下から教卓へと肘をつき頬杖をつく。
「なあ、遼ちゃん?」
と、二俣は遼太郎へと同意を求めたが、今日の朝の個別指導の時、特に遼太郎はそのようなことを言ってなかった。
「俺は気づいてたけど……。」
と、遼太郎が答えると、
「えっ!?そうか、さすが遼ちゃんは……。」
と言いかけて、その後の言葉を引っ込めた。