Rhapsody in Love 〜約束の場所〜
気を取り直して、二俣がみのりと遼太郎を鼓舞した。
「うん!」と、遼太郎も力強く頷く。本当は、遼太郎自身がみのりにそう言ってあげたかったと思った。
〝期待してる〟という意味の笑顔を残して、みのりが職員室へ帰ってゆく。廊下に出て、その後ろ姿を見ながら、二俣は呟いた。
「ごめん、遼ちゃん。さっき俺、みのりちゃんにキュンと来てしまった…。」
遼太郎は少し驚いたが、以前「間接キスした!」と怒ったときのように、嫉妬心などは湧いてこなかった。
遼太郎も先ほどのみのりの言葉に、同じくキュンと胸が絞られていたし、二俣がそう思っても不思議はないと思ったからだ。
「沙希ちゃんには言わないから、心配すんな。」
遼太郎がニヤリと笑いを浮かべると、二俣も苦笑いをする。それから、二人はがっちり肩を組み、教室へと入っていった。
みのりには、いろいろ考えなければならないことがあった。
まず、週に10時間ほどこなしている1年生の授業について。次に、3年1組のこれからの授業の内容について。遼太郎をはじめ4人ほど抱えている個別指導について。十一月の下旬に行われる箏曲部の新人大会について。