Rhapsody in Love 〜約束の場所〜



 ついつい現実から目を逸らしたくなるが、初任者に課せられている研究授業も12月の初旬に行う予定なので、こちらもそろそろ準備しなければならない。


 そして、花園予選のことについて。

 花園予選については、別にみのりがあれこれ考えることもないのだが、みのりの思考は、すぐにこのことへと飛んでいっていた。


――出来ることなら、本当に花園へ行かせてあげたい…。


 それは、みのりの願望でもあった。



 箏曲部の新人大会も近づきつつあり、こちらも気にかかっていた。

 といっても、自由曲は100周年の記念式典の時と同じ曲だし、課題曲も外部講師の先生がしっかり指導してくれているので、出来栄えについては心配ないのだが、気がかりなのは吉長という生徒のことだ。


 元来明るく元気な感じの彼女が、このところ調子が悪そうなのだ。

 体だけでなく、心の方も。

 「どうかした?」と訊いてみても、「大丈夫です」と返ってくるばかりで、不調の原因を教えくれる気配はなかった。



 それに、もう一つ気がかりなことがある。
 それは遼太郎の指定校推薦の入試のことだった。



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