Rhapsody in Love 〜約束の場所〜
聞けば、法南大学の推薦入試は、花園予選の決勝戦の翌週末だ。順当に決勝戦まで勝ち進んだ場合、花園予選が終わってから入試の準備をしていたら間に合わないだろう。
いくら指定校推薦とはいえ、適当では済まされない。遼太郎のことだから、手痛い失敗をすることはないと思うけれども、やはり準備は万端にするに越したことはない。
週の半ばの水曜日、朝の個別指導の時に、みのりはこの気がかりを、遼太郎へ切り出した。
「狩野くん、推薦入試の準備はしてる?」
日本史のことではないことを訊かれたので、遼太郎は頭の中を切り替えるのに、数秒かかった。
何も言わずにみのりを見つめ返すので、
「私が心配することじゃないかも知れないけど…。」
と、付け足した。
「推薦入試は面接だけなんで、まだ取り立てて何もしてないです…。」
遼太郎はきまり悪そうに、答えを返した。
「あら?小論文はないの?」
「はい。その代り、願書に800字くらいの志望理由を書いて提出しましたけど。」
「ふーん、指定校になると入試も簡単に済ませちゃうのかな?でも、『面接だけだから』なんて侮ってたら、足元すくわれちゃうよ。」
ギクリとした表情で、遼太郎は絶句する。