Rhapsody in Love 〜約束の場所〜
その派手に出血していたのを、止めてくれたのがみのり本人だ。
手当てをしてくれた時のことを思い出して、遼太郎の胸が大きく一つ鼓動を打ち、チクンと疼いた。
意識すると平静ではいられず、日常生活もままならなくなるので、遼太郎はみのりへの深く激しい感情を、心の奥底に封じ込めることに努めていた。
だが、みのりのこの問いは、遼太郎の心の堰を危ういものにする。
そんな遼太郎の苦悩をよそに、目の前のみのりの表情には取り立てて他意はないようだ。サラッと言い出されたところを見ると、あの時のことはみのりにとって特別なことではないのだろう……。
「顔を洗う時とか、触るとちょっと痛いですけど。大丈夫です。」
遼太郎はいつものように恥ずかしそうに、首をすくめた。
「そう、顔に青タンができなくてよかったね。せっかくの男前が台無しだもの。」
みのりにそう言われ、遼太郎はグッと言葉を呑み込んだ。照れて、顔がみるみる赤くなっていく。
そんな遼太郎を見て、みのりは面白そうに唇を歪めた。
「……狩野くんって、自分が男前でカッコいいって自覚がないのね。」
「えっ…!?」
遼太郎はもっと赤面して、ようやく反応した。