Rhapsody in Love 〜約束の場所〜
頬にこの髪の感触が残っている。遼太郎の汗と土埃と太陽の匂いも、みのりの感覚の中に刻み込まれている。
いきり立った荒い息遣いが、みのりの腕を掴んだのを境に穏やかになっていった。
ほんの1分足らずの時間だったけれど、自分の気持ちが遼太郎へ、遼太郎の気持ちが自分の心へ流れ込んで来るのを感じ、一つの繭の中にいるような一体感があった。
あの時は遼太郎を落ち着かせたい一心でそうしたのだが、当の遼太郎がどう感じているのかまでは、思いが及ばなかった。
あの行為を、深読みされて誤解されるかもしれない。けれど、いちいち説明する方が、変に意識させてしまう可能性もある。
いや、今日の遼太郎を見る限り、そんな様子は感じられない。むしろ、自分の方が変に意識しているみたいだ。
確かにあの時、相手が遼太郎ではなかったら、ああいうことはしなかったと思う。……というより、他の生徒だったら、同じことをしたくてもできなかっただろう。
相手が遼太郎だったからこそ、心の内を読んで、落ち着かせることができたのだと思う。
どうしてああいう形で落ち着かせようと思ったのかは、自分でも分からない。時間も迫る中で、早くどうにかしてあげたかった…。ただそれだけだった。