Rhapsody in Love 〜約束の場所〜
この日の遼太郎も、とても早く問題を解き終えた。
知識もさることながら、問題を的確に判断する読解力も身に付いたみたいだ。みのりがあまり解説する余地もないので、個別指導は随分早く終わってしまった。
さて、後の時間はどうしよう…と、みのりが思っていた時、
「そうだ……。」
と、遼太郎が何かを思い出した。
ポケットに手を突っ込み、差し出された手のひらには、みのりのハンカチが載っていた。
「これ、ありがとうございました。」
思いもよらない物が出てきて、みのりは目を丸くする。
「狩野くんが預かってくれてたの?」
「試合の帰り際、メディカルの先生が渡してくれて…。」
遼太郎が笑みを帯びた顔をする。その顔と、受け取ったハンカチを、みのりは交互に見て言った。
「これ、お母さんがしてくれたの?」
「何をですか?」
「洗濯とアイロンがけ。」
それを指摘されて、遼太郎の顔は、ほのかに赤くなった。
「…いや、俺がしました…。母さんに頼むと、いろいろ厄介なんで。」
女物のハンカチだから、詮索されてしまうということだろうか…。