Rhapsody in Love 〜約束の場所〜



 この日の遼太郎も、とても早く問題を解き終えた。
 知識もさることながら、問題を的確に判断する読解力も身に付いたみたいだ。みのりがあまり解説する余地もないので、個別指導は随分早く終わってしまった。


 さて、後の時間はどうしよう…と、みのりが思っていた時、


「そうだ……。」


と、遼太郎が何かを思い出した。


 ポケットに手を突っ込み、差し出された手のひらには、みのりのハンカチが載っていた。


「これ、ありがとうございました。」


 思いもよらない物が出てきて、みのりは目を丸くする。


「狩野くんが預かってくれてたの?」

「試合の帰り際、メディカルの先生が渡してくれて…。」


 遼太郎が笑みを帯びた顔をする。その顔と、受け取ったハンカチを、みのりは交互に見て言った。


「これ、お母さんがしてくれたの?」

「何をですか?」

「洗濯とアイロンがけ。」


 それを指摘されて、遼太郎の顔は、ほのかに赤くなった。


「…いや、俺がしました…。母さんに頼むと、いろいろ厄介なんで。」


 女物のハンカチだから、詮索されてしまうということだろうか…。


< 370 / 743 >

この作品をシェア

pagetop