Rhapsody in Love 〜約束の場所〜



 遼太郎がアイロンをかけているところを想像して、みのりは今にも笑いだしそうな顔になった。


「そう、ありがとう。」


 みのりが礼を言うと、遼太郎は首を横に振った。


「俺の血で汚したんですから……。」


 あの時、みのりは自分の口に指を入れて、血にまみれたマウスガードを取り出してくれた。あんなことまでしてくれたことを、改めて遼太郎は思い出した。


 あの時のことを口に出して言うと、いつもの自分でいられなくなる不安はあったが、言わずにはいられなかった。


「先生、あの時は本当にありがとうございました。先生がいなかったら、あの試合は勝ててなかったかもしれません。」


 遼太郎はみのりの方へきちんと向き、丁寧に頭を下げた。

 改まった態度をとられて、みのりは戸惑った。


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