Rhapsody in Love 〜約束の場所〜



「私がいなかったら…なんて、大袈裟ね。私が処置しなくても、直に血は止まったでしょうし、勝ったのだって、狩野くんたちの実力よ。」


 みのりからそう言われても、遼太郎は首を横に振る。


「いや、あの場では、俺が一秒でも早く試合に戻る必要があったし、…それに、焦った気持ちのままピッチに立ってたら、あの最後のトライはできてなかったと思います…。」


 話題が、みのりが変に意識していた核心に触れようとしたので、みのりは息を呑んでピクリと体を硬くした。


「先生に気持ちを落ち着けてもらってなかったら……。」


 遼太郎はあの時の抱擁を思い出し、言葉を詰まらせた。

 みのりに抱かれた感覚が、体中を駆け巡る。
 太腿の上に載せた両手をぎゅっと握りしめて、感情の荒波が顕れないように歯を食いしばった。


 言葉を詰まらせた代りに、みのりを見つめる遼太郎の視線が、言葉以上にその感情を物語った。


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