Rhapsody in Love 〜約束の場所〜
苦悩がにじんだようなその深い眼差しに、みのりは吸い込まれそうになり、全身に震えが走った。肌が粟立ち動悸がして、息が浅くなる。
これ以上、遼太郎を見つめ返すとどうにかなってしまいそうだけれど、みのりの瞳は囚われて動かせなかった。
…同じような眼差しで、かつて石原がみのりを見つめてくれた。だけど、遼太郎のこの眼差しは、石原のものよりももっと深く繊細なものだった。
「……最後のトライの前に、狩野くんは2回パスを出したけど、ああいうのもサインを決めてやってるの?」
お互いの想いを含んだ沈黙が漂った後、ようやく気を取り直すように、みのりが口を開いた。
遼太郎も虚を衝かれたように、眼差しの色に現実味が帯びた。恥ずかしそうに、口許をほころばせる。
「試合で、あんなに上手くいくことって、あんまりないんですけど…。あれは、ダブルクロスの後、ふっくんとはクロスのサインプレーです。…先生、よく覚えてますね。」
みのりは嬉しそうに、フッと笑う。
「あれは特別。胸が空くようなプレーだったから。思い出すだけで、ドキドキしちゃう。」
と言って、みのりは目を閉じたものの、本当はさっきの遼太郎の眼差しのせいで、まだ鼓動が乱れていた。