Rhapsody in Love 〜約束の場所〜
「ありがとう。…私、ここに来ちゃいけなかったわね。狩野くんに迷惑かけて、練習の邪魔して…。」
「……そんなことありません!」
遼太郎は即座にみのりの言葉を打ち消したが、みのりの表情を見て、その否定はみのりの心に届いていないと分かった。
「生徒のお世話をするはずの教師が、逆にお世話してもらうなんて…情けないわ。」
みのりの落ち込んだ顔を、遼太郎は見つめた。どうにかして、みのりの心を晴らしたかった。
「先生は、随分俺にお世話してくれたから、たまには俺にもお世話させてください。俺の流血に比べたら、泥水なんて大したことないし。」
遼太郎がそう言うと、みのりは少し沈黙した。
「…狩野くんの流血には、二度も遭遇したわね。」
と、みのりの声色が、少し明るくなる。
「俺、血の気が多いんです。」
と、珍しく遼太郎が冗談を言ったので、みのりはフッと息を漏らして口元をほころばせた。
遼太郎はみのりと寄り添うように傍を歩き、グラウンドの入口までみのりを送った。そして、アスファルトの道路にみのりの足が着いたのを、安心するように確認した。