Rhapsody in Love 〜約束の場所〜



 遼太郎がピッチで走るとき、いつもみのりはその姿を捉え、その心に寄り添ってくれていた。
 そこから遼太郎も力を得て、もっと速くもっと長く走れたし、大きな相手にぶつかっていく恐怖も消えた。


 だけど、今日はそのみのりがいない。
 遼太郎は、自分がどれだけみのりを拠り所にしていたかということを、今更ながらに思い知らされた。


「何としても、今日の試合には勝たないといけないな。」


 再び振り返った二俣が、言葉を投げかける。


――……その通りだ!


 遼太郎はその思いを口には出さず、ただ力強く頷いた。


――先生がいない今日を、終わりの日にしてはいけない……!


 競技場へ向かうバスの中、高速道路を走るバスの車窓から、紅葉に色づいた山々の流れる景色を眺めながら、遼太郎は唇を噛みしめた。



 みのりが意気消沈してメールを送った後、出勤のために着替えをしようとしていた時、携帯電話のメール着信音が鳴った。
 開いてみると、二俣からだ。


『みのりちゃんが応援に来てくれないのは寂しいけど、仕事ならしょうがないよな。でも、絶対今日は勝って帰るから、来週は俺らの勇姿を見てくれよ! 』


 自分たちが負けるはずがない…と言わんばかりのメールの内容に、思わずみのりは笑みを漏らした。


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