Rhapsody in Love 〜約束の場所〜



 あの安心感の中にどっぷりと浸れたらどんなに居心地がいいのだろうと…。

 だけど、そんな思いに気づいてしまう度に、みのりは何度もそんな思いを打ち消さなければならなかった。



 土曜学習の講義は3年生の国立文系クラスだったので、その空気は真剣そのものだった。個別指導をしている工藤も出席している。
 真剣な生徒に対しては、みのりも自然に講義に熱が入る。これは、みのりにとっての〝真剣勝負〟。いつしかラグビーの試合のことは、みのりの意識からなくなっていた。

 点を取るための勉強は、日本史を愛するみのりにとっては不本意なことなのだが、解れば楽しみも増えてくる。
 いつも浜田先生がどんな指導をしているのかは分からないが、みのりが採用試験で培った点を取るためのノウハウを伝授すると、生徒たちの目は研いだナイフのようにきらめいた。

 時間を忘れて講義に没頭していると、いつの間にか講義も終了時間になり、お昼になっていた。


 ラグビーの試合も終わっているはずだ。それに気が付くと、途端にみのりの心がざわめいた。



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