Rhapsody in Love 〜約束の場所〜
「それどころか……?」
みのりは隣に座り、長机に肘をついて遼太郎の顔を覗き込む。
それどころか……、遼太郎はなかなか集中できずに焦っていたことを言おうかと思ったのだけど、みのりから返してもらったタオルで平常心に戻れたことを思い出して、思い留まった。
みのりの薫りが残るタオルを嗅いで正気に戻れたなんて、いささか変態じみてると、自分でも恥ずかしく思ったからだ。
「いや、それどころか、じゃなくて。……先生のおかげで、勝てました。」
遼太郎のこの言葉に、みのりは首をかしげた。
「……江口先生のおかげで勝てたの?」
みのりの問いに、遼太郎は首を横に振る。
「いや、仲松先生の……です。」
「私!?なんで?応援にも行ってないのに?」
みのりのこの疑問は当然だったが、遼太郎はただ含みを持たせた笑みを見せるだけだった。
みのりは訳が分からなかったが、肩をすくめて気を取り直す。
「さて、面接の質問に対する返答を、考えてきた?」
と、指導の本題に入った。