Rhapsody in Love 〜約束の場所〜
「本当は狩野くんが自分で集めた方が勉強になるんだろうけど、狩野くんは試合もあるし、放課後は練習もあるし。資料集めは、私の方が手早くできると思うし…ね。」
「はあ…、すいません。お願いします…。」
遼太郎は拳を太腿に置いて、頭を下げた。
情けなくてかっこ悪い自分を、殴ってやりたい気分だった。
「あ!でも、明日は個別指導できないんだった。明日は筝曲部の新人大会があって、引率でいないのよ。」
困ったように、みのりが自分の額を指先でつつく。
「うん、集まった資料を今日の終礼でも、明日の朝礼の時でも、澄ちゃんに預けるから、それに目を通しておいて。明後日の朝の個別指導から返答を練り直そう!…ね?」
みのりは頼もしい教師の顔で、遼太郎を安心させようとした。
けれども、遼太郎は自分の不甲斐なさと、みのりに醜態をさらしてしまったことにショックを受けていて、なかなか立ち直れそうになかった。
個別指導が終わって立ち上がった時、みのりの目が遼太郎の顔に留まった。愛しむような眼差しで、スッと手が遼太郎の顎に伸びて、そこに触れる。