Rhapsody in Love 〜約束の場所〜



「ここ、擦り剥いてる。試合で怪我したの?」


 ショックで固まっていた遼太郎の心は、すぐに反応できずに、体までも硬くした。


 座っていた時には気が付かなかった顎の傷が、二人とも立ち上がるとみのりが見上げるかたちになり、目に付いたのだろう。

 いつも通りの優しいみのりの物腰に、突然心臓が跳ね上がる。


「…はい。」


 遼太郎は、そう応えるのがやっとだった。


「そう、頑張ったんだね。他には、怪我はない?」


 見下ろしたみのりの柔らかな笑顔には、打ちのめされた遼太郎の心を瞬時に癒す力がある。


「いや、ちょこちょこした分は、他にもあります。」


「そうなの?大丈夫?」


 心配そうに首をかしげるみのりのその仕草に、遼太郎の胸はキューンと切なく疼いた。


「…だ、大丈夫です。」

「やっぱりタックルされるときに怪我しちゃうの?」

「うーん…、タックルするときにも怪我はします。」

「そっかぁ、じゃ、その程度で済んでよかったって思わなきゃいけないのかな?」


「……?」


「だって、『死んでもいい』と思ってタックルするんでしょ?」


 前々回の試合の時に自分が言ったことだと思い出して、遼太郎は「あっ」と息を呑み、それから恥ずかしそうな顔をした。


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