Rhapsody in Love 〜約束の場所〜
「狩野くんが死ななくて、よかったわ。」
みのりが冗談を言っていると解った遼太郎は、歯を見せて笑った。
「ちょっと苛めすぎちゃったかな…」と思っていたみのりは、それを見て少し安心する。
「それじゃ、また今日の授業でね。」
微笑みを残してみのりが遼太郎に背を向け、職員室へ行こうとしたところ、自分が座っていたパイプ椅子に突っかかった。「おっと」とよろけたが、椅子の背もたれを掴んで、かろうじて倒れるのは免れた。
きまり悪そうに、みのりは遼太郎を振り返る。
「……今の、見てた?」
「……はい、見てました。」
返事と同時に、遼太郎は堪えきれずに吹き出す。
この前の第2グラウンドでのこともあって、遼太郎はみのりのこんなところを、とても〝かわいい〟と思った。凛々しい教師の顔を見せてくれた後なので、そのギャップを感じるとなおさらそう思う。
そして、笑いはどんどん大きくなっていく。
「笑・う・な!」
みのりは遼太郎に歩み寄り、満面の笑みの片頬を軽くつねった。
驚いた遼太郎が目を丸くすると、みのりもおどけたような笑顔を見せて、再び職員室へと足を向けた。