Rhapsody in Love 〜約束の場所〜
午後からは、この邦楽の新人大会と合わせて行われる郷土芸能の発表大会があり、伸びやかに歌われる民謡や、男子高校生たちが勇壮に舞う神楽などが披露された。
あまり観たり聴いたりする機会のないこのような発表を、ゆっくり鑑賞することは忙しい日常を忘れられ、心にゆとりも生まれてくる。
そして、結果発表。芳野高校は6月と同様、銀賞に終わった。7人で演奏したにしては、良くやったとみのりは思ったし、部員たちも一様に納得した様子だった。
和やかな雰囲気で、これからまた来年の6月に向けて頑張ろうと誓い合い、帰路に就くことになった矢先のことだった。
「先生、ちょっと来てください!」
筝曲部の部長が血相を変えて、みのりのところへやってきた。尋常ではないその様子に、みのりは嫌な予感をよぎらせ、部長の後を付いていった。
トイレの洗面台のところで、吉長がうずくまっている。
調子が悪そうだったから、気分でも悪くなったのかと、みのりは吉長に近づいて声をかけた。
「吉長さん、どうしたの?」
顔を上げた吉長の表情を見て、みのりはただ事ではないことを看て取る。
「……先生。二人だけにして…。」