Rhapsody in Love 〜約束の場所〜
妊娠中の体のことは、みのりにはよく分からないけれど、妊娠していてこの状況は緊急を要するに違いない。
どうすればいいのだろう。どうしたら、吉長を守れるのだろう。
自分にのしかかる、あまりにも大きな責任。
焦燥感と不安で、みのりは押しつぶされそうになる。
でも、手の震えを押し込めるように握り、目をつぶって立ち上がった。
――……しっかりしろ!!私……!!
みのりは目を開けて、自分を奮い立たせた。
バッグから携帯電話を取り出して、119番に電話をかける。
救急車を呼ぶと事が大きくなってしまって、却って吉長を傷つけてしまうのでは…という懸念がみのりの中に過ったが、最悪のことを考えたら迷ってはいられなかった。
妊娠している高校生が腹痛を訴え出血しているとの旨を伝え、救急搬送の依頼をした。
そして、このことを連絡するために、少しその場を離れる必要があった。
「すぐ戻ってくるから、ここで横になって。」
と、吉長の体を横たえさせ、楽な姿勢にした。
トイレの外にいた生徒たちに、中に入らないように、誰も中に入れないように指示をし、大会の事務局と会場の事務所へ、吉長が妊娠していることは言わずに救急車が来ることだけを伝えた。