Rhapsody in Love 〜約束の場所〜



 このまま吉長に付き添うことになれば、他の生徒を引率して帰ることは出来なくなる。
 咄嗟に、みのりは外部講師の先生と、同じ市内の御幸高校の邦楽部の顧問に、芳野高校の筝曲部の部員たちも連れて帰ってもらうことを思いつき、そのように依頼した。


 生徒たちにも説明をしなければならなかったが、


「吉長さんは、体調が急に悪くなって、一応救急車で運んで病院で診てもらうから。」


と、やはり本当のことは言えなかった。


 トイレに戻ると、吉長はほとんど意識を失いかけていた。量はそう多くはないが、出血は続いている。
 鼻血や外傷での出血ではないので、みのりにはどう対処していいのかも分からない。

 掃除用具入れから雑巾を出してきて、流れ出て床を汚している血を拭き取ろうかと思ったが、どのくらい出血しているのか救急隊員が把握できるように、敢えてそのままにしておいた。


「吉長さん、すぐに救急車が来て病院に連れて行ってくれるから。大丈夫よ、安心して。」


 横たえた頭の横に膝をついて、みのりは吉長の頭を撫でた。吉長は青白い顔で、かすかに頷いた。


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